ステンドグラス〜ガラスが描く世界
世界遺産に認定された建築物の中には、ステンドグラスがほどこされている物も少なくありません。そうした世界遺産では、建物そのものの歴史的価値や、美術性はもちろんのこと、内装であるステンドグラスの美しさを認められて世界遺産として認定されたものもあります。ここでは、世界遺産に認定された建物のうち、ステンドグラス装飾をおこなっている建物を紹介してみましょう。

世界遺産のステンドグラス

世界遺産とは

その前に、世界遺産とはどんなものなのか、簡単に紹介しておきましょう。世界遺産とは国際連合教育科学文化機関(通称:ユネスコ)によって「人類全てにとって、共通の価値を認められるもの」として認定されたものです。「みんなにとって大事な財産なので、一国だけのものではなく、世界中で大事にしましょう」というわけですね。これにより当自国以外からも広く保護を受けられる代わりに、当事国が勝手にその世界遺産周りを開発したり、環境を悪化させたりするようなことが出来なくなるのです。

世界遺産の種類

世界遺産には、大きく分けて自然遺産、文化遺産、それらの特徴を複合して持つ複合遺産があります。自然遺産というのは、名前の通り残すべき価値がある、貴重な生物やその生息地、見事な景観など、貴重な自然に関して認定されます。文化遺産というのは遺跡、文明の証、歴史的な建造物などについて認定されます。簡単に言えば自然遺産は人間の手が加わっていないもの、文化遺産は人間の手によるものというわけ方をするということです。もちろんステンドグラス(を含む建造物)は、文化遺産にあたります。
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イギリス・カンタベリー大聖堂

11世紀、イギリスのカンタベリー地方に建てられた教会がカンタベリー大聖堂の元になります。この建物が火事で焼けてしまったために、フランス人技師の手によって建て直されたのがカンタベリー大聖堂です。イギリスでは初めてとなるゴシック様式を取り入れたことでも有名です。その後いくつかの増築・改築を繰り返して、現在の型に落ち着きました。そうした歴史的背景、建物とその内装の美しさなどを認められて、1988年に世界文化遺産として認定されたのです。

カンタベリー大聖堂のステンドグラス

カンタベリー大聖堂の真価は内装にある、とも言われ、実に大量のステンドグラスが目を引きます。その上天窓に至るまでびっしりと埋め尽くしてあるので、上のほうのステンドグラスの模様は高すぎて見えないほどです。出かけるならぜひ双眼鏡などの準備をした方がいいでしょう。さて、肝心の図柄は聖書の一部を図案化したものが多く、文字を読めない人たちのために一種の紙芝居的な役割を果たしていたとされます。ビジュアルで伝えた方が説教もわかりやすいですしね。
カンタベリー大聖堂
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ドイツ・ケルン大聖堂

ドイツの歴史と共に歩んできたケルン大聖堂。4世紀頃に世界中の先鞭を切って聖堂が建てられ、その後818年に改築を済ませ、ケルン市のシンボルとして親しまれてきました。しかし、1248年に火事で焼けてしまいます。すぐに再建が進められましたが、16世紀に入っても未完成、しかも財政難により中途半端な状態のまま放置されてしまいます。放置された期間は実に300年近くにも及びますが、19世紀に入ってやっと復興、完成の運びとなります。

完成後は連合軍の度重なる爆撃にも耐え抜きました。その後、終戦を迎えるとすぐに補修されて現在に至り、1996年に世界文化遺産に認定されました。2004年から周囲の環境悪化により危機遺産(このままでは存続が危ぶまれる世界遺産)に認定されましたが、2006年には自力で復興、危機遺産認定を解除されました。

ケルン大聖堂のステンドグラス

上で紹介したカンタベリー大聖堂が、何回もの改修を行った裏には、この当時大聖堂の建築様式がコロコロ変わっていった(簡単に言うと、流行が変わったのですね)という歴史があります。ところが、ケルン大聖堂は財政難による放置期間の「空白の300年」があったおかげで、かえって昔ながらのゴシック建築様式をそのまま現代に伝えています。ゴシック建築の特徴には大きな窓、たくさんの窓があり、当然ながらそれらの窓には美しいステンドグラスが多用されているのです。
ケルン大聖堂
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フランスの大聖堂群

フランスは、世界遺産に認定された大聖堂をいくつも抱えた国家です。では、そのうち3つを紹介していきましょう。

ノートルダム大聖堂(ランス・アミアン・パリ)

有名なノートルダム大聖堂は各地にあり、ランス地区のノートルダム大聖堂は、その付近に建つ、サン=レミ旧大修道院やトー宮殿などとあわせて一つの世界遺産として認定されています。ここに使われているステンドグラスは、有名な画家シャガールの手によるものや、おさけの製造過程をあらわしたものなどユニークなものが多いようです。そのほか、パリのノートルダム大聖堂には有名なバラのステンドグラス(バラ窓と俗に言われるもの)があり、アミアンにもアンティークなステンドグラスが現存しています。
ノートルダム大聖堂

サン=テチエンヌ大聖堂 (ブールジュ)

フランス、ブールジュ地方のサン=テチエンヌ大聖堂は1992年に世界遺産の仲間入りを果たしました。その時の登録名はブールジュ大聖堂であり、今ではこちらの通称の方が良く使われるようです。11世紀から16世紀にかけていくつかの増築を繰り返した後、ほぼ当時のまま現存しています。肝心のステンドグラスは、最初はありませんでしたがアンティークなものが13世紀ごろに付け加えられ、その後16世紀になってからさらにフランス様式とも言える華麗なステンドグラスが多数追加されました。
サン=テチエンヌ大聖堂

シャルトル大聖堂

世界遺産に認定されたのは1979年と、比較的早い時期に認定を受けたシャルトル大聖堂は、ステンドグラス群の歴史的価値・美術性の高さが特に評価されています。13世紀のアンティークステンドグラス群は、度重なる戦火から住民たちの努力で守られ、当初186作品あったとされるうちの実に156作品が現存しています。それらステンドグラスは特に青の色調の鮮やかさが際立つ、素晴らしい美術品として残されています。戦争時には、付近の住民が協力してステンドグラスを外して保管し、終戦後に付け直すといった努力のおかげで、現在でも蒼い輝きを放ち続けているのですね。
シャルトル大聖堂
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